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種村大基『監査難民』(講談社BIZ)

ここ数年、企業の会計監査に対する動きが激しい。
新会社法、sox法、内部統制、各種監査体制の整備確立といった点について毎年新しいキーワードが追加されてくる印象。

本書は、全体としては国内の監査法人業界の再編成模様、特に中央青山監査法人からみすず監査法人への組織の変遷、業務終了、そして解散という時系列を軸として、一連の国内主要監査法人の再編成模様を描いた作品。
金融庁、公認会計士協会、公認会計士、そして監査法人それぞれの利害と視点をつぶさに説明しながら、

主要国内監査法人とJAL、日興コーディアル、三洋電機そしてカネボウなどの国内企業、そして海外監査法人、渦中のそれぞれの思惑について生々しく言及。

どこまでがウラが取れた真実、どこからが補完的要素なのかというのはわからないけれど、公認会計士がどれだけの業務量と社会的責任を背負っているのか。この背負っている物の大きさに対して一般の(あるいは専門家の)評価は充分なものかどうか。また、彼らが市場を支えるインフラとして職務業務を全うできるような社会的な基盤整備は追いついているのか。そういった点について考えさせられる。

利益計画のブレを許さない市場、決算粉飾を行う企業、粉飾に気付かない振りをする公認会計士、監査対象から報酬を得る監査法人、罰則でコントロールを図る公官庁。
みすず監査法人(旧中央青山監査法人)の例では、監査法人業界が槍玉に上げられたことになるが、はたしてそうなのか?
制度そのものが不備の塊、としてより根本的な癒着防止策と会計監査業務に関する報酬制度、評価制度、牽制機能の開発が必要ということとしたいと考える。制度が期待通りに機能しない場合には、往々にして、“制度設計”側に問題があるからで、“人”を責めるのは解決策にはならないから。
本書のタイトル、『難民』という煽りが誰(何処)に向けられたものなのか、読み終えた今、もう一度冷静に考えてみたい。

ときに、監査法人内部の視点によった解釈が多いのは、著者種村氏が、米国公認会計士合格の裏打ちがあるからなのか?

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