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三浦展(みうらあつし)さんの『下流社会』シリーズ2冊を読了。
下流社会 新たな階層集団の出現(2005)
下流社会 第2章 なぜ男は女に“負けた”のか(2007)

これまた、遅ればせながら、このタイミングになってしまった。
とっても簡単に言うなら、いまどきの職業観と人生観についての書籍。

本書は『ここ数十年の労働者における価値観の変遷はこう(らしい)です』というとても素直な推論について、サンプルを取り緻密に統計を駆使している。だから集計結果の表やグラフに多大なスペースが割かれている。
その文章(本文)から受ける印象とは別に、“割と真面目に”取り組んだ社会科学系論文の体裁をなしていると思う。
サンプル数の不足を指摘されそうな印象もあるけれども、それでもなお、読む価値がある内容になっているとおもう。

類型の手法を利用して、大衆に理解しやすく構成されていることこそが美点なんだとおもう。

ザックリした分類で言うと、オトコ/オンナの性別。これに、雇用条件を掛け合わせたり、年収を掛け合わせたりして、様々な価値観をあぶり出すようなやり方といってよいか。
著者は、女性を、お嫁系/ミリオネーゼ/かまやつ女/ギャル/普通のOL、に、男性を、ヤングエグゼクティブ/ロハス/SPA!系/フリーター、にそれぞれを類型して典型的人物像(キャラクター設定)に見立てて、分布図にまとめ、考察をすすめている。
上にも書いたが、この方法によって、見たくもない小難しい集計結果についての解釈や、得られる考察について、統計知識の無い一般の人でも楽しく判りやすく表現しているのが本書の良い点なのだとおもう。
“類型”という手法はそもそも、「正確」な内容の伝達ではなく「万人が理解できる」ある種のステレオタイプに落とし込む手法なので、この辺りで誤解を生まないといいなとよけいな危惧をしてみたりするのは事実なわけだけど、補って余りある。

さて、内容に関してはというと、「いまどきの職業観と人生観について」なので、自分自身や身近なアノヒト、もしかしたら自分のご子息を思い浮かべながら読み進めるととても楽しい。
自分について言うなら当然の事ながら、ある1つの類型に重なる自分がいるかとおもえば、部分的には別の類型に属する場合もある。様々の主観が自身に内在していることに気付かされる。
もちろん今の社会、あるいはこの『下流化(当然その反対には上流化する人口もいるわけだが)』の延長線上を見据える気概で読むのがまっとうとはおもうのだけど、本書で挙げられる“統計的事実”を受けて『じゃぁ、社会や制度を是正しましょう』というアプローチを促すような内容ではないんじゃないか、個人的には思う。
“統計的事実”から生まれるものは“著者の推論”の範囲でしかないわけだし。

現実的には、今後も継続的に社会は一握りの事実上『上』な人たちの私利に傾きを保ち“大衆の都合”とは関係なく進んでゆくんじゃないか?と思ったりする。実際別の側面から言うと“大衆の都合”が社会を“より良い物にする”とも限らない訳だし。
だから、『ここ数十年の価値観の変遷はこうです』という単純な事実として面白いし、それ以上ではないとおもう。
それにしたって、社会の状況を冷静に理解して、自分の立ち位置を捉え直しして、少し生きやすく(気持ちに)割り切りを持つことが出来る、って効用は期待できるかもしれません。良い本です。ぁい。

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