磯部潮さんの『「うつ」かもしれない 〜死に至る病とどう闘うか〜』を読了。
磯部さんは、医学博士、臨床心理士資格のホルダー。
また、愛知県の“いそべクリニック”の院長、東京都の“大井町こころのクリニック”の非常勤医師も務める。
「うつ」って病気は知っているようで意外と知らないな、と思ったことが今回のきっかけ。
下手に「うつ」という病気のことを知るとなんだか言い訳がましくなりそうだ、なんて漠然とした恐怖感も手伝って、「うつ」に関する様々の書籍に関しては正直いって敬遠気味だった。
書店で本書を見かけたときに、『死に至る病とどう闘うか』という副題が目にとびこんできた。このキャッチって一時の「癌(がん)」とまるっきり一緒だな、と軽い気持ちで手に取ってパラパラめくってみた。
簡単に言うと、著者磯部さんが「うつ状態」〜「うつ病」について、20年!の臨床・治療経験とその振り返りをつづった内容。
患者自身はもちろんのこと、その家族も、そしてもちろん担当医師も“苦しい”。
毎年すべての患者を救う事はできない、という医療としての限界についても触れる。
本書は、統計的に、分析的にあるいは脳科学的に「うつ病」を解説するのではなく、著者自身が体験した「患者とのコミュニケーション(臨床)」を書籍化したものといっていいだろう。
臨床現場についての著書は、その従事者の母数のせいなのか、患者のプライバシーの点で差し障りがあるのか、あまりお目にかかることが無いので、複数のケース・スタディが掲載されている本書はこれだけでも有意義。
内容の濃さはもちろんとして、磯部さんの(これはもう職種業種の垣根を越えて)仕事への向き合い方に感嘆。そして、絶賛したい。ブラボー!
では、個人的にどういった方に読んでほしいか。
「心療内科」や「精神科(医)」というフレーズに偏見を持っている人。
自身が「最近、心とも身体ともつかず“なんだか”不調だな」という人。
転職や異動なんかの機会にある人。
人事担当者や経営者をはじめとする管理職の人。
時間と小銭入れが許すのであれば、オトナの常識として全員読むと良い。
一つには自分のため。
誰も自分を守ってくれないのだから、自分で心身ともに健康を維持したい。
もう一つは家族、知人友人とのコミュニケーションのため。
世の中にはいろんなメンタルの状態の人がいる。無知や無学で家族や知人や仲間を支えてやれないようなことは本意でない。どちらかというと警鐘を鳴らしたい。いや、鳴らせたい。
きっと読んでよかった、と思えます。
読んでない子はおいてかれる、こと必至!