清水勝彦さんの『経営意思決定の原点』を読みました。
備忘の為に付箋を用意していたんだけど、まるっきり使いませんでした。なんでかっていうと、要点が殆ど全ページに及びそうだったから。
当初、書店で本書を手にした段階では、
MBA の教科書もしくは 3 ヶ年計画立案のティップス的な内容と思っていました。が、誤解。いざ読み始めてみると全くそんなことはない。それじゃどうかというと、実際の経営者の発言、実在の企業のエピソードを交えながら展開する、経営者の心の働きや暗黙知、暗黙感情の明文化という感じ。
仮に啓蒙書の類いに位置づけるとしても、それでも、この手合いの本としては比較的価値が高いんではないかと思いましたよ。なぜなら、著者が研究者という経歴を持って、また、社会心理学や認知心理学の学際的な知識を備えて、更にコンサルタント業をやってきた、そういう客観視とかメタ的視点に支えられているものがあるから。
自分の能力や労力や時間やを元手にご飯を食べているすべての労働者にとって必読といって良いと思う。所謂社長、経営層だけではなく、管理職も一般従業員もパートタイムも派遣社員も、ビジネスに携わる全員読んだらいいと思う。
以下は、本書の内容を離れて。
みんなが読んだらいいと思うと同時に、それでもやっぱり、経営層の人々が高給を獲っている理由を高級取り自身がよく考えてみたらいいとも思う。決裁権を持つということは、究極的には個人の胸一つに押し込むしか術がない「債務」(「責任」という言葉を使わないのは定義がズレた人が多そうだから。大概とらないしね、責任。) みたいなものが付き物だとおもう。それが何か、いまいちピンと来ないエラいヒトはエラくないエラいヒト。
自分こそが誰よりも会社のことを考え、また自分こそ「正しい」と信じている人たち (つまり自信家ね) や、「社長は分かってないんだよ」と言ってみたことがある人たちは特に、自分が貰ってる給与、ポスト、受ける期待に応じて、今一度、胸に手をあてて考えて欲しいと思う。(ボクは思い当たる節…アリ)たぶん、感謝してもしきれないくらいの経営リソースを配分して貰って、なおかつ債務不履行も不問にしてもらってるはずだから。
そういえば何故だか、「自信って大事よ」って声は割とよく聞くんだけど、「自信って危険よ」というヒトはほとんどいないな。自信って意思決定においては危険ですよ。自信があることは発言の機会頻度とは正の相関関係がありそうだとは思うけど、自信があることとその説が正解であることは相関無し、いやむしろ有意なな負の相関が見いだされる可能性さえありそうだからね。
エラくて、自信家なヒトは自戒の意味でゼヒ読んでください。(胃を痛めながら自信家を演じているエラいヒトは除きます)