この1、2ヶ月の間で、徐々に書店ビジネス書コーナーの一等地での平積みが目立つようになってきた勝間和代さんの一連の出版物。
て、看過できなくなってしまった感の後押しも受けて、読んでみました。
book 起きていることはすべて正しい
起きていることはすべて正しい―運を戦略的につかむ勝間式4つの技術

読み始め「セレンディピティの力」と bold で印字されているのを見て

かなり違和感を感じました。「『その手の』啓蒙本つかまされちゃったかな?」と。
んが、最初に否定しておきますが、『その手の』ではなかったですよ。

公認会計士資格取得(当時最年少)、出産(学生時代、以降ワーキングマザー)、監査法人勤務、コンサルファーム勤務、証券アナリスト、そして独立。とそんなプロフィールを持つ勝間さんの経験を裏付けとした、自己実現実践のためのハック本、みたいな感じに受け止めることがボクには可能です。

ボクは通常、個人の経験に裏打ちされた程度の運(とか幸福とか)の『呼び寄せ』説は、「夜、はさみを使ったらダメよ」ってのと同じ類いのものでありかつ裏付けが希薄なものとして、大方話半分で忘れない程度に捉えるワケです。が、ボク自身が割と、一般的に「運」のくくりに入れられている事象について、「いやいや、準備あってのでしょ。運だけじゃないっしょ。」って思うようにしてる派なので、言い換えると「起きていることはすべて正しい」派とも言えます。
ただ、勝間さんのようなヒトでも、潜在意識とか呼び寄せとか効果も手法も未だ曖昧な事象、をメインテーマとして取り扱うんだ、という事実にちょっと驚きもありました。いやもう少し言うと、著者も書中に挙げている通り名刺であるあるいは顔である出版物で、冒頭からいきなり「セレンディピティ」をぶつけてくる、その「誤解を恐れない気分」の中に彼の著者は今現在居るんだなぁ、ということに思い及んだといいますか…

ただし。著者勝間さんはそういう風には考えないでほしい、と自身の幼少期のネガティブな例まで挙げて「再現性への疑惑」を否定しています。が、それでもやはり著者自身が築き上げたプロフィールも、著者に及んだ幸運も、「誰でも(再現)できるもの」は超えているでしょう。
幸運にもか、残念ながらか、ヒトは生まれながらに「肉体」的制約の中で個性や能力、特筆点を紡いで生きているとボクは考えています。その他の環境要因は努力と知性ででもってコントロールができるとしても、生まれながらに持った環境としての肉体、特に「物理的な脳の制約」は打破が難しいことと思ってもいます。事実、著者自身も「コミュニティごとの美醜を意識する」という件を書いていますから、このことは重々承知しているんでしょう。
だから、著者でないと実現できなかった事象の只中に著者はいるし、著者が偶然得た環境の中での法則性のことを本書は解いていると言えそうです。(当たり前か)

でも、だからといって、本書が万人とって有益でない、とは成らないことを前提にこんなことを言っているワケでもあります。著者が獲得した現象の複写物をさらにはその事象の全部を手にする必要は毛ほども無いわけです。ごく一部を盗んだり、アレンジしたりすることで、わずかでも前を向く要素をゲットできるなら、そりゃもうメッケモンといって良いわけですから。

そんな感じで。
ボクは個人的にこの手の事柄を「戦略的に」やる趣向の持ち主ではない(そうするとアザとい自分が結構不幸におもえる)のですが、自身の事始めの時期に姿勢を正すようなくらいの気分でこの本を読んでみましたよ。世の中もちょうど成人式ですしね。

付け加えておくと、なんだかんだ言って女性にオススメ、かもです。

関連リンク
勝間和代公式ブログ