成毛眞著 “大人げない大人になれ!”を読みました。
偶々みていた著者本人のブログで本書の紹介があって、なんとなく面白そうかもなってことで手に取ってみました。
自宅最寄りの書店では、入り口直ぐの台に平積みになっていました。オレンジ色の表紙が目立ってました。
最初の数ページは、著者の自宅(たぶん)の写真が何点か掲載されています。そこにはラジコンとか、ミニカーとか、書庫とか、なんだかとっても羨ましいライフっぷりでございます。ということで、ベクトルの向きだけは近いぞってことで、購入決定です。
本書の位置づけは、自分の好きなことに夢中になって事に当たるほど、その結果の確度も高まるだろう、ストレスも無いだろう、自分の人生の意義も高まるだろうという著者の仮説と、著者の実体験や知人の有様からこの仮説の裏付けの本、みたいな感じです。安易なカテゴライズを適用してしまいますが、自己啓発に相当するでしょうか。
読みやすい平易な言葉づかいですし、またテーマの切り出し方も読んでて胸が空くような事柄が綴られております。結果、グングン読み進んで、買った翌日に一気読み完了です。
内容はタイトルのまんま。
大人げない大人(になること)のススメです。もう少し言うと、『堂々と』大人げない大人でいなさい、いろんなメリットがきっとあるから、ということです。
そういうことを、マイクロソフト代表取締役社長まで勤めた御仁が云う、というところに多少意味合いを持たせてはいますが、示唆していることは、ことさら高い視点が必要な物ではなく、いたって平易で真っ当な事柄と感じられました。
例えば、ファインマンの本を読んだヒトであれば、ああいう生き方っていいよね!ってことがメッセージだと思ってもらえばいいですし、例えばこないだの ” This is it ” を観たヒトだったら、「まるで耳に拳を突っ込まれているみたいなんだ…」って言ってるMJのあまのじゃくな可愛さって良いよねってのを思い出してもらえれば、ここでいう成毛さんのいう「大人げない」の指し示すイメージに近いと思います。
ひっくり返していうと、シンプルなことを難しそうな顔で、難しく解説したり、物事を難しくすることが仕事であるヒトや、保守!保守!保身!保身!既得!権益!って趣向が強い大人なヒトタチにとっては、読んでてあまり心地よくないかもしれませんね。(まぁ、それも「自覚があれば」の話なのかもしれませんけど、ね)それから、仕事に勤しんでいる振りを力一杯演じる仕事に就いているヒトなんかも、本書はターゲット外となります。
翻って、ボク自身の個人的な話をすると、自分の持ってしまっているドーショーもない特徴を、ようやく近頃受け入れる覚悟ができてきたところですので、ボクにとっては本書は追い風です。はい。
ドーショーも無い特徴の一端を挙げておくと、ボクは社交が嫌い、物事が長続きしない。それに、『違う』って思ったことはどーーしても受け入れる事ができない。そんなダメな部分がコンプレックスとしてあったりします。そういったことがコンプレックスに変化をしたのは俗にいう「社会に出て」しばらくたったタイミングだったことも割とはっきり覚えています。
たとえば、ボクはチビのころから集団でお遊戯みたいなことが大嫌いで、通っていた幼稚園のお遊戯の時間には、だいたい先生を通じて参加拒否をしていました。あまりしょっちゅうだったので、親を呼びましょうかと脅されたりもしました。まあ、その脅しに屈してお遊戯にさんかすることはありませんでしたが。また小学生のころには、(そうしている姉がうらやましてく)自ら自分もやってみたいとねだって通わせてもらったピアノ教室。これいざやってみると嫌いで嫌いで仕方なく、1年足らずで母親へ辞退を申し出ました。かなり叱られ、諭されましたが、無事、辞める事をゆるしてもらうとこまでこぎ着けました。これはピアノに限らず、お習字も、水泳も、あれもこれも似た様なものでした。本人が違うと思った、むしろ通り越して苦痛に感じていたんだから仕方がありません。
その後、22, 23 歳のいい大人になってからも、自ら選択して進んだマスターコースも、コレは違ったという想いが強く、結局 初年の前期の半分も経たないうちに、通わなくなってしまいました。これも自分で選んだ道とはいえ、違うんだから、仕方が無かったんですね。とりあえずマスター取得して広告代理店にでも…なんていう就職課的説得もありましたが、なおさらイラっとくる始末でした。
歳を重ねて大人になることで何かそういう難ある性格もなんとかなるのだろうなぁという漠然とした展望を持ってもいましたが、経験から云うとそういうのって全然変わらないんですよね。他のひとがどうかは知らないけど、ボクはそうだった。
だから、もうそういうダメなとこ(あまのじゃく、というんですかね)は自分の前提として受け入れてしまうしかなくって、これを受け入れた時点で既に他のヒトタチと同じプロセスや平均値の近似値は踏めないということも自覚せざるを得ないですよね。そういった自分が抱える前提を弊害と位置づけてクサっていることもできるんだけど、それよりはその一見弊害ととれるその特徴の裏側・反動・副作用をとって良い面と定義してみたり、自分を他のヒトと差別化できる個性と位置づけるしかやりようが許されない。
だから結局、自分が好きだったり、続ける意義を信じていられること、それにやっていて心地よいと感じることでないと、その対象に向き合い続けられない。仮に、自分を押し殺して対峙したところで、所詮それは「無理」なわけで、捗りゃしない。まして、他のヒトより勝ることなんか期待できない。それに、あまりそういった無理をつづけてると、身体を壊してしまう。
人並みか人並み以上に成果を出そうと思ったら、結局は「自分を知って、受け入れる」ことに立ち返るしかないんですよね。
そういうシーンまで踏まえて、本書は心理的には大変有り難いことです。
まあ、とはいえ、たぶん著者は持ってるスペックがスペシャルな人物(憶測)で、かつ50代で、という点は、自分と置き換える場合には引き算しておかないといかんなぁなど思いますけどね。
その辺は、大人度 MAX のエスポワール利根川のメッセージもお忘れなく、ってことで。
大人は質問に答えたりしない
それが基本だ お前たちはその基本をはきちがえているから
今朽ち果てて こんな船にいるのだ
無論中には 答える大人もいる
しかし それは答える側にとって
都合のいい内容だからそうしているのであって
そんなものを信用するってことは
つまりのせられているってことだ
なぜそれがわからない・・・・?
なぜ・・・・ そのことに気付かない・・・・?
ってことで、本書の目次を記しておきます。
chapter 1 大人げなさが求められる時代がきた
本当に大人げない人々
ノーベル賞受賞者の二人に一人は可愛い
子供のようなビル・ゲイツ
私が出会った大人げない人たち
大人になってしまったマイクロソフト
グーグルは子供のままでいられるか
日本の大企業に大人げなさはあるか
日本人はおバカタレントがお好き
ネオテニーという進化論
大人げなさが作り出す80兆円市場!chapter 2 大人げないとはどういうことか
夢中になることが最高の才能
興味があれば何でもやってみる
あまのじゃくの価値観
知らないことは強みである
クリエイティビティを生み出すおバカ
子供は最強のセールスマン
常に主役になる子供
変化を恐れるフツウの大人たち
決まり文句が大好きな大人
プロほどルーティンにはまりやすいchapter 3 やりたいようにやればいい
我慢なんてしなくていい
目標を持ってはいけない
あるがままでいることが個性
人は子供のままでいる人に憧れる
おじさんの言うことは9割が間違い
失敗しないためのただ一つの方法
期限ぎりぎり体質は悪くない
寄り道をしてゴミ探し
空気を読んで空気のような人になる
自分を変えるなんて無理chapter 4 大人げなく楽しく生きる方法 実践編
子供の頃の趣味を維持しよう
大人を怒らせよう
楽しむための仕掛けをつくる
キャリアプランは持たない
英会話もいらない
資格を頼りにするのはやめよう
極端なお金の使い方をする
時間の使い方は一点集中浮気型
神話をつくろう
子供のように読書をしようchapter 5 大人げなさを取り戻すための本棚
人生を大人げなく楽しむための本
好きなことを突き詰めた本
常識を覆した本
それでもビジネス書が読みたいのなら
役立たないが愛すべき本
加えて、本書の最終章に挙っています著者のオススメ本が大変興味深かったので、以下に記しておきます。
人生を大人げなく楽しむための本
ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)
ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)
マリス博士の奇想天外な人生 (ハヤカワ文庫 NF)
積みすぎた箱舟 (福音館文庫)
好きなことを突き詰めた本
プラネタリウムを作りました。―7畳間で生まれた410万の星
ダチョウ力 愛する鳥を「救世主」に変えた博士の愉快な研究生活
僕がワイナリーをつくった理由
常識を覆した本
モーセと一神教 (ちくま学芸文庫)
眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎
ノアの洪水
それでもビジネス書が読みたいのなら
社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論
山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略
コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった
役立たないが愛すべき本
もしも宮中晩餐会に招かれたら―至高のマナー学 (角川oneテーマ21)
馬車が買いたい!
ローマ人の物語〈8〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(上) (新潮文庫)
ローマ人の物語〈9〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(中) (新潮文庫)
ローマ人の物語〈10〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(下) (新潮文庫)
ローマ人の物語〈11〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(上) (新潮文庫)
ローマ人の物語〈12〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(中) (新潮文庫)
ローマ人の物語〈13〉ユリウス・カエサル―ルビコン以後(下) (新潮文庫)
面白いことというのは山ほどありそうですナ。