どこの会社でも手をのばしやすい分析手法として、SWOTがありますね。
経営や事業をなるべく客観視して、状態や要素を整理して、それでもってこの先に必要な施策を検討立案する、意思決定する。そのために…となると、だいたいSWOT分析やりましょうか、という話になるものです。
で、そのSWOTに何の因果か高い編集能力というフィルターが絡んでしまう。なんでかってーと。
そもそも、状態とか要素を抽出する必要があるのですが、内因であり相対的でもある「強み」「弱み」に関しては、どうしても現場理解している人間も巻き込んで抽出しなくちゃいけない。外因の「機会」と「脅威」についても、一応現場の市場感についての認識を複数件程度は聴いておかなくちゃいけない。しかしながら、みんな平生の業務で忙しい。仕方がないのでインタービューシートをバラまいて記入依頼。それを回収し、集計する段取りになる。
となると、かなりの割合、水準も語の意味もヒチャカメッチャカなものが還ってくる。言っている一つ一つには意味があるし、項目そのものは決して間違っちゃいないのだけど、要素を配置するカラムが間違ってるケースが多数。
「他所より手厚いサービス」と書けばそれは強みだし、「他所より価格競争力が低い」といえばそれは弱みに入りこんだりして。両者が指し示している物事はといえば、「他所よりコストをかけている」って事実が見えてくるんだけど、それはいいことなのか悪いことなのか、他所のサービス価格と市場シェアを計らない限り、実は何ともいえないというフシギが起こる。
似た例では、一社深耕型のビジネスモデルを強みとするのか、反対に、少数顧客依存の収益構造の不安を弱みと見るのか、みたいなのもちょくちょく出てくる。
あと物事についての温度感も結構違うことがある。「IT 化」とか「モバイル化」とかそういうテクノロジ系の要因、とか。それ、今強いて機会として挙げることかね?なんてのもあったりなかったり。似た感じだと、「世界的不況」とかもあったりなかったり。困る。
まぁ、書いてくれるヒトの立ち位置ひとつで、どれも真実だったりするのは判るんですけどね。
それからヒトってのはふだん考えてもないようなことは書けない、って問題もありますね。「脅威」の欄にまんまと競合商品について一切記述がないなんてこともしばしばのはずです。
そんな因果で、SWOTの取り纏め担当者の状況理解や取捨選択能力が、挙ってくる個別のファクト以上に大きく作用してしまうという、無茶苦茶強力なフィルタが後行程にこそ存在している、という事実のことが無駄に心配になったりします。
それから、SWOTなんかやってるヒマがあったら、今すぐ取り組むべき一つのことを実行してしまうのも、まんざら悪くない選択でもある。
ダイヤモンド社
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