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東京中央区界隈には日本を代表するインキメーカーが2社。近い方がディックことディーアイシー。もうひとつが東洋インキ。どちらのメーカーに関しても、色見本帳を接触点に、デザイナーをやってるようなひとにはなじみ深いのかなとおもう。かくいうボクはあまり知らないんだけど。

これまであまりまともに考えたことがなかったけど、よくよく考えてみれば色のついていない物体なんていうのは実はそうそう無いですね。さらの段ボール紙だとかトイレットペーパーの芯だとかは色を塗ってないものが多いですかね。あとは木の素材感を活かした家具だとか、金属製のプロダクトとか。

でも身の回りにあるありとあらゆるものが、意図的に着色か塗装をされたものだってことを改めて思うにつけなんだかそれは相当凄いことなんだな、なんて振り返ります。鞄も服も靴も家具も家電製品も自動車も電車も飛行機も建物も道路も街も。なにからなにまで色なんです。
むしろ無着色の紙だとか、生成りのシーツだとか、麻袋だとか、洗剤だとか強いて着色していませんよってなウリ文句がまかりとおるくらいの状況です。食品なんてものそうですね。

なので、世の中は色につつまれてます。言ったらコモディティ化の極みみたいなポストに塗料とか顔料とかそういうのがあるっちゃあるわけです。

30代中盤のボクからして振り返ってみると、たとえば家電話といえば黒だったし、ランドセルといえば赤か黒、自動車といえば車種あたり1色だったような気がします。それが今じゃどんな製品もだいたい数色のカラー・バリエーションが揃えられ市場に展開されるのが極普通です。たかだかモバイルルーターでも白と赤と黒と、なんならラメなんてのがあったりして。製品品質そのものにはまるで意味が無いかもしれないけど、消費者側での「選びとった感」には貢献してる部分があったりするのですね、おそらく。アタシならピンクだし的な。

ところで。話は急に小さくなりますが、今日日中の何気ない会話の中で聞かれることがありました。好きな色なに?
で、この問いかけに対して何一つ思い浮かばない訳です、色が。ビジュアルにおいても。色名においても。右脳にも、左脳にも。なにも浮かばない。白でもない。黒でもない。ちびの時は男の子だから青ってなってたな。思春期くらいなら紫色っていってたかな。今はなんだ?なんもないぞ、となりました。
何がいいたいかって言うと、実のところ無いんですよ。好きな色なんてもんは。相対的な問題か、周辺環境からの類推かで、つまりTだかPだかOだかを手がかりに適切そうなものを選択してるだけで、好きだと思っている色の実態は無いのです。なんだろうね、この残念感。いいけどべつに。

でもかたやファッションなんてものは、時代性や流行や、一致感や違和感や、そういう色と色との組み合わせの妙みたいなもので成り立っていて、そうやって色同士の相対的な関係の中で色の価値や好みが決まるというところがあって。たとえば、濃紺のスーツにいけしゃあしゃあと明るい茶のベルトと靴と鞄をあわせられるひとは、仕事はできそうだけどきっとつまんないヤロウなんだろうななんて推察したりしますよね。まあこれは色の話ではないんですけど。

なんで、まあ、この話にはとりとめもまとまりもなにもありませんけど、ボクたちは全く意識しないけど無数の色に包まれて生きてて、それら無数の色のひとつひとつを、いつかのどこかの誰かが「よし、この色にしよ!」と決めてそうなった物なんだなって空想すると、人間ってどんだけ膨大な仕事してるんだよ、文化ってどんだけ折り重なってるんだよってな具合に気が遠くなるって話でした。

ところで、好きな色は何ですか?


色彩―色材の文化史 (「知の再発見」双書)