言うまでもなくそのルールには攻めには適さない偏屈さや、ときに競争上の敗因になりうるような回りくどさも備えているのだけど、それでもなお。統治の都合上様々の起こりうる事柄と人の性質とを勘案しきめ細かく思慮を巡らせその積み重ねの明文としてルールがあって、ルールというのは往々にしてそういう葛藤をかかえながら改修を続けてゆく文化的な取り組みなんだとおもう。
なんて前置きをしながら。
いま情報ツール製作市場(なんてものがあるのか?シランが)では、企業のSNS参加を言いたがる御仁がうろついてる状況がある。
そこでは、格段伝えるべき相手、伝えるべきメッセージが明確化されるでもなく、Facebook アカウントの取得とFacebook ページの公開が流行なんですと、他所の企業は既に始めてますよと、従ってSNSスペシャリストの我々へいろいろご相談なさいよと、そういうセールスが良しとされているらしい。
さらには、なにか別のツールのオマケ的な位置づけとして、たとえばコーポレートサイトをリニューアルしたらならFacebook もご一緒に、イベント開催するならそれに併せてFacebookもご一緒にといった具合で提案する輩もいるらしい。彼らにとってFacebook の話はバーガーに対するポテトかドリンクみたいなものとして理解されている様子。
しかしながら、企業のSNSへの参加というのは彼らの理解するパラレルワールドにあるそれとは似ても似つかないやっかいな代物だとボクは考えている。
プラットフォームが何であれ、法人格が一般生活者とマンツーマンの対話を実施するということが、どういった内容の事柄をどれくらいの頻度で発生させる可能性があるのか、またそれら可能性予測をどう評価するか。真剣に考えなくちゃいけない事柄だろうと思う。仮に、マンツーマンの対応に否定的な形で当該コミュニティにアカウントだけ所有してみたり、あるいは当該アカウントで述べたいことだけを述べたてるというスタンスがどう映るか、よくよく空想を働かせたい。日々の運用をする担当者の業務量を、深夜、祝祭日の対応をどう見立てるか。緊急時対応のワークフローをどう組むか。個人情報取り扱いにどう向き合うか。よくよく空想を働かせたい。ユーモアにあふれる投稿を安定的継続的に供給できるか。質問に対してどうこたえるか。あるいは応えないか。よくよく空想を働かせたい。そしてなにより、SNS参加と統治との折り合いをどうつけるか。そしてSNS参加のどこにメリットを見いだすか。きっちりと説明をつけたい。
穿った言い方で勘弁してもらえるなら、法人格はやっぱり人格ではない。法人格アカウントを運営するのは割り当てられた担当者という個人でありながら、そこでのトーク品質は法人格を代表していなくちゃならない、というゴッコ遊びのルールを大のオトナたちが押し通してるにすぎない。例え、法律上人格が設定されていても、とどのつまりは利害関係ある大勢のオトナたちから形成され個人よりもよほど多いステークホルダーから成り立つ組織だ。個人がつながりあい愉しみあうために用意されたプラットフォームの中でパフォーマンスするには相当の困難がともなうことを(仮に結果的にそうでなかったとしても)、素直に前提に持つべきだとおもう。ましてそのことについて封殺などしてはいけないとおもっている。
翻って、企業と情報について感じている率直なところはこうだ。
企業にとってもっとも負荷が小さく取り組みと回収が容易な手段は、広告ということになる。金を払い、他人に作らせ、他人のメディア上で言わせる片方向の情報伝達。その次が直接には金を払っていない第三者のメディアに報じられること。取材を受けて(受けた体で)、他人に言わせる片方向の情報伝達。
これらオーソドックスなやり方に比べて、企業が企業自身の口で語りかけ、継続的な運営を行う前提のSNSプラットフォームは、企業にとって労多くして、かつ都合の調整が非常に厄介になる。
それでもなおそういうことに挑みましょうよという外からの誘いかけが、SNSもやりましょーよー、ついでに「いいね」されちゃいましょーよーw(in パラレルワールド)、の中身なんだと、はっきりと解釈し評価しなくてはいけない。SNS やりましょーよーって言ったヤツにとっては酒の肴で、刺身のつまで、ポテトもプリーズ!であったとしても、持ち主の企業にとっては軽々結論づける話ではない。やらせようとする方とやらされる方とでは、重みがまるで違う。今まさにコースでしのぎを削るする遼くんと、「もちょっとこーバックスイングを…なぁ」なんて鼻毛抜きながら言ってる茶の間のオジサンくらい違う。
労が多く、調整が困難で、特段集客に資するわけでもなく、特段販売にに資するわけでもなく、特段認知促進に資するわけでもないようなものを、何かのついでに持ち込むような底の浅い発想をしている時点で、怒っていい。電話ならばガチャンと切ればいいし、初回の面談なら直ちに打ち切ってしまえばいい。既に他の案件を依頼してる関係なら、その件は引き上げるべきだ。
ボクは、企業のSNSについて良いとも悪いとも思わない。また参入について閾値を上げるほど、SNS を上等なものだとは考えない。得があるならやるべきだし、損をするならやらなきゃいい。ただ損も得も方法も品質も何もかも自分の頭で考え評価を下さなくちゃいけない。もし万が一素人アカウント・プランナーに誘われるまま手放しで社交界へ参入してしまったならば、真っ白いタキシードに真っ赤なポンチを引っ被って大恥をかくか、おとなしく壁の華でもやってるかに陥る確立が概ね100%ほどあるように見える(in ボクのパラレルワールド)というだけのことなんだ。
ただ真剣に、ただ粛々と、一般生活者へ為すべき還元を、行えばよろしい。
そのプラットフォームとして Facebok が自ずと最適ならば、使えばよろしい。