まあ、国も違えば文化も違い、モラルも法律も死生観も人を讃える様式も様々だろうし、故人へ、企業への、偶像への心象も、また製品を欲しい衝動にかられるかそうでないかもなにかならなにまで人それぞれってところだから、あんまり野暮なことは言うもんじゃないよねと自覚しつつ。

incoins.com が故スティーブジョブズのフィギュアを販売ということで、それなりににぎわいを見せてるみたい。今まさに欲しいひとは沢山いるだろうし、商魂としてはなかなか見所があるとか思いつつも、肖像権、財産権と意匠まわりの課題は大丈夫なのかいね?と気になったところ。実際どうなんだろう?

inicons.com の製品を見てると、顔や衣類やニューバランスも含めてフィギュアが備える見てくれはもちろんとして、そのフィギュアのセールス用Web サイトのあり様もそこに並ぶ故人の言葉らしきものもなにからなにまで徹底的に文字るスタンス。スティーブ・ジョブズ本人を文字り、アップル社を文字り、iPhone アイコンを文字る。とにかく文字るという節操のない演出は、商売への想いがたぎりすぎてて、ほとんど全然クールじゃないし、それに(仮にそれがあったにしても)モチーフとその偉業への敬意を感じさせない仕上がりだと思う。「好き」だからつくっちゃったんじゃなく「儲かる」から作ったんだ、と。実態はそうでも、そうは見え(せ)ない方が夢があっていい。

製品のあまりの完成度ゆえ意匠問題クリア判定って型は、この世界にあり得てほしいと願ってる程度にボクの頭のネジは緩いけど、とはいえ今回の inicons.com の製品と製品の販売サイトは手放しに歓迎できるほどの優れた出来ばえには見えないんだけど、どうかな?

と、ボクはこれを、「商売」「演出」「権利所属」「敬意」「フィギュアを作る動機」といろんなことをごちゃまぜにしながら、なおかつつきつめれば意匠に課題あるステータスで商売に挑んでいる可能性があるだろうって推察のもと書いているんだけど、きちんと生前の本人確認か、没後の権利者確認が済まされているのなら、あるいは一部の権利者であろう Apple 社に確認が済まされているというのなら、その場合にはむしろOKを出した権利者側の感覚になにか大きな問題があるんじゃないかなと思っている。ので、単に真相がどんななのか知りたい。

視野を広げトイ/フィギュアの世界全体で見れば、スティーブ・ジョブズだろうがオバマだろうが実在する人物のフィギュアなんてのはあまた製造・販売されてるわけだし、ビジネスと契約だけに限定して語るならば、売上げが相当派手なことになったり、他者権利侵害が相当深刻にならない限りは、実相として構わんのだろうけど。けども、ビジネスと契約だけではつまらんのよ。技術力とタイミングだけでは物足りないのよ。


スティーブ・ジョブズ-偶像復活