Mubz snap

何をもってのそれなのかはよく知らないんだけど、ノマドとか。流行ってない、望まれてない、憧れられてないはず。どこの誰がそんなもので得をするってのか、皆目見えてこない。生来臆病者で好きこのんでできるだけ大きな、届く限り立派そうな組織に身を投じたいくせして、その揺り篭の中で今度は組織に縛られていて不自由で本来持ってる力が発揮できないだとか。放言もここまでくるともうね。

そもそもくじ引きよろしく一寸した手違いというだけで幸いにして与えられたスペースと、デスクと、什器と、電話と、インターネット回線とを、それに便所と給湯室と汲み放題のコーヒーと会議室と定期券を、放棄したいのなら存分にそうしたらいい。それでも足りなければ、縦書きの名刺もプロジェクトメンバもグチ仲間も厚生年金も全部返上したらいい。そうやって言うところの自由を手に入れた上で、己が何者たり得るのか、試してみたらよろしい。

その行為には準備なんかひとつもいらない。申請手続きもいらない。むろん誰かの承認もいらない。引き継ぎ作業だっていらない。たった今直ちに実行したらいい。誰も止めてないはずだしむしろ皆が勧めてるはずだ。皆にとっては、席は一つでも空いていたほうが色々と都合がよいのだから。

そうして歩を進めたならば、すぐに、スパイダーマンの哀れなメリー・ジェーン・ワトソンの気持ちになるだろ。組織の庇護がなければ、そこにいるのはただの夢見がちな乙女おじさん以外の何者でもないんだから。遊牧民は屈強なモンゴリアンにしかつとまらないというのに。
そうしてなんとなく、そうして仕方なく、くだらないチェーンの喫茶店に入ってみたらどうだろうか。長居客として嫌われ、電気を盗んで嫌われ。そうやってまさにその時をノマドスタイルのスタートの瞬間として、世の中と己の間に存在する何が効率化されるのか。どの価値がどれほど向上したか。どこの誰がその自己査定すらもきかずロマンチストでおっちょこちょいのノートPCおじさんを頼って仕事を依頼するというのか。
その目で確かめといで。