WWDC 2012 でひとしきり諸々の情報が発表になりました。

開催前の下馬評とは違って、そんなに重要性高い発表は無かったんじゃないかと思ってるんですけどどうでしょう。そういう印象を抱くひとつの例が、Retina。かねてから、Retinaは画面の解像を高めて「美しく」見ることができる魅力的な機能向上だと思っているし、なんだかんだいってあわよくば恩恵にあずかりたいと願ってる。いつかはRetina、とかいって。けど。反面。そんなにイノベーションを感じさせないですよね。放っておいても、真っ当な技術進化の後にいつかはたどりつく先という(だからといって他社にやられちゃうよりも自社でフラグシップというのがいいので商業的には理解できるけど、ここはひとつユーザ視点で)、ね。
未だ視力が順調なボクにとって画面解像度が上がり表示の品質と表示の自由度が上がることはとても好ましいことだし、もしもボクがいまよりもっとパワフルな環境を求めていて、MacBook Pro の買い増しや乗り換えを考えていたらきっと間違いなく Retina モデルを選択するけど、だけど。ところでそんなに、モニタに表示される画像の細部を、あるいは映像の細部を、あるいは文字のアール部分のギザギザ具合を目くじら立ててチェックすることに、そんなに欲求高かったっけ?と思うとそれはない。

というのが、MacBook Pro に関する発表への雑感で、そのほか MacBook Air の IvyBridge にせよUSB3にせよその辺のことは「しってた」で済ませることができる内容じゃないかと思う。

かたや iOS6 についても、Apple が独自の地図サービスを提供しますと言う件、FB機能統合の件、Passbookの件、いずれにしても、なんかもう新しくないというか、そういうことはサードパーティに委任してもらえればそれで済むようなところなんじゃないかなんて思います。この辺りのクダリを別の言葉で置き換えるなら、Googleのサービスは使わないことにしました、FBとつるむことにしました、Foursquare のお株を奪うことにします。そういった響き。それらもろもろはそっち側(Apple)のMA関係の諸事情の結果なんじゃないの?とやや引けてくる空疎感。iOS6 でまた生活がこんなにも豊かになるという驚きはほとんどない。否むしろ他人(Apple)の事業ロードマップに付き合わされてるだけの感を強く受ける。もう少し言えるとすれば、FB 機能の連携強化で、FBの実態や近未来の有様やサービスポリシーへの理解無く(いやとうぜん利用規約に同意してアカウント所有してるんだけど、ここではそのユーザー実像として)意図せず個人情報をFBに預ける人続出という事態は危惧されやしないのだろうか、なんて。まあ FB 株においては甚だ好材料なんだろうけども。

さて。若干懐古主義的になるけど Apple のこれまでの変遷を心象だけで振り返ってみたときに、MacBookAir の薄さはセンセーショナルだった。iPod の小型化には目を見張るものがあった。iPodtouch の UX は衝撃だった。iPhoen での電話事業参入は(大)衝撃だった。それに iPad と ePub とには(UXにはもうだいぶ慣れてたけどそれでも)期待感があった。siri はまだ使ったこと無いけど先進性についてはフォトジェニックだった。興奮した。感動した。
ところが、今年は画面の解像度向上なんだそう。地図だそう。小売業連携だそう。FB 機能統合だそう。正直そういうの待ってたんじゃないんだけど、どうかな。

実際今回の発表の中、最も食指が反応したのは新 AirMac Express のデザイン変更(AppleTV と同外寸、黒色に対して白色)であったりしたわけです。といえ、アップグレード感はそんなに大きくないので、手を出すのは少し先になりそうですけど。
ぐずぐず言ってすみません。もしかしたらボクが今耳の後ろ側が痛いせいでこういう風に感じてるだけなのかもしれない。MacBook Pro Retina モデル現物を目の当たりにすればヒャフーと大興奮してポンと 20 万円払うのかもしれない。が、少なくとも発表後の現時点では、そんな感想を抱きました。

で、結論として何が言いたいかというと(もちろん今期 WWDC が偶然そういうサイクルに位置したというだけのことかもしれないけど)、殊更イノベーション(を感じさせる演出、少なくとも)という視点に関してだけは結局故人スティーブ・ジョブズが居ないともうまるでダメなのかもしれないということ。
否、たとえどんなにスティーブジョブズが有能であったとしても、只一人の人物の力で Apple の繰り出してきたイノベーションの総てがまかなわれているなんてことは妄言でしょう、誇張でしょう、って思ってきてたけど、でももしかしたら。もしかしたら。ポジティブに捕まえなおすことができるなら、今年故人のことがあってこの苦難を乗り越えることに奔走したからこそ発表の内容に精細を欠く結果に至ったなのだよ、とかおもいたい。その結果は WWDC 2013 の内容で図るしか出来ないのだけど。

そんなわけで、もう本年は Mountain Lion の中身へ期待を集中することにします。


スティーブ・ジョブズ I