リーン・スタートアップを読みました。
冒頭からいきなり引用です。
こういうことが何回かあった結果、彼は優秀な社員だとの評価が社内にできた。これはキャリア的にはいい話なのだが、彼にとってはがっかりする話でもある。彼は確かに優秀だが、製品化の計画に潜む問題をみつけられるのは個人的な能力によるものではなく、何が起きているのかを予測し、代替策を提案する理論を身につけているからだ。それなのに、いくらアイデアをぶつけても、マネージャーはシステムの部分が目に入らない。彼のように優秀な人材をみつけてチームに入れることが成功の鍵だとしか考えられないのだ。イノベーションがどのような形で生まれるのか、根本的な考え方を変えれば組織的に優れた成果を出せる−彼はそう示しているのに、その可能性に気づかないのだ。
リーン・スタートアップ —ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす
残念ではありますが、こういうことはよくある話なんだろうと思われます。人は悲しい生き物ですので奇遇にもポストがちょっと上になるとたんに利害調整のための政治的取り組みに対して惜しみなく時間と労を割り当てるようになりますし、その時間配分の結果として業務量が増えたように錯覚しますし、このニセの繁忙の対価としてミクロの世界に身を投じて、事象を細かく砕いて、因子と因子の相互関係を見極め、衰退の原因を特定し、取り除き、また前進の材料を特定し、調達し、好転の起点にたつその能力を大きく損ねます。そしてそれが個人としてのライフプランと、プランを支えるキャリアアップの正しい道程であるとされていますし、仲の良い(利害がぶつからない)隣のマネージャーを飲みに誘えば先方も同じ事を考えているので、「そうだよな」と賛同し合い、強化します。ええ、正しさをまっとうしてくださいな、あなたたちだけの。そして、こういう結論を迎えてください。
やってはいけないことを素晴らしい効率で行うほど無駄なことはない。
漠然とであれ、そんなようなことを常日頃感じてて、それはたとえば軽い湿疹程度から重度の皮膚炎ほどに色々レベルがあるとおもいますけど、感じる違和感がピークを迎えつつあるのなら、なにか色々と考え直すべき時期に来ているんだとおもいます。
考え直すというのは、決してマネージャーに考え直させるその材料に成り下がることではなく、あなた自身が考え直すのです。たとえどれほどあなたが優秀な社員であったとしても、自分の立身出世と自部門予算の最大化と、余力があれば部門スタッフの頭数を守ること、そして最期に優秀なスタッフに試しに仕事を預けてみることといった優先順で構成されたマネージャーの脳の中身までは書き換えられませんから。
ところで。肝心のリーン・スタートアップの方法論について。MVP の発想で構築ー計測ー学習、で、革新会計で進度を確かめながら早めのピボットです。バッチサイズは極力小さくねとなります。適切に細かく、適切に小さく、適正な尺度で、間違った成長で浮つかず、大きな失敗を避け、確実な成功を積み重ねてゆくというような、なのです。本書の筋とは違った視点になってしまうかもしれませんが、最小限の機能で小さくちいさくスタートを切るというな、心理的にも資本的にも現実感が高まりますからいいアプローチですよね。
著者エリック・リース(Eric Ries)のブログは下記。
Lessons Learned http://bit.ly/T2hWIf