伊賀泰代著「採用基準」を読みました。amazon に Kindle版が出てるというのに、それを知らず、誤って書店で購入するという落ち度。悔しい。それはさておき、内容は、面白かったです。

しかし。紙面の大半がリーダーシップ論で占められていたというのは想定外。少々マイナスです。リーダーシップは言うまでもなく大切なことなのだろうと憶測するのですが、それ以外の基準について、それなりに肝心もあるのだろうし、もっと多くもっと広く描いて貰えたらもっとよかった。

コンサルティングの業界の、問題解決の仕方、その中で必要になるリーダーシップ。これがビジネスを成功へ導くうえで良いものであり、経済活動に限らず世に必要なもの、というのは否定しないところなんです。が、やや語弊込みで言っちゃうと、コンサルティング万能主義的な枠組みの中で語られるところのリーダーシップ重用指向みたいなことを、どの程度真に受けたら良いのかなと(こんなにまでリーダーシップリーダーシップ言われると逆に、ね)反対向きの不安を覚えます。
仮に西洋的世界観で、経営者という王がいて、これが問題をかかえてて、そこにコンサルタントという騎士が仲間を引き連れて現れて、戦地に赴き持ち前のリーダーシップで勝利をもぎ取り、王と市民の課題を解決し、報償と名誉を与えられましたとさ、と。そういう社会観とか歴史観、観念は僕の中にあまり根付いてはいないし、鷹の団グリフィスの役を演じられる気もまーったくしない。犬猿キジの桃太郎でだって、大変だ。

それよりも、もうちょっと生態系的な自然な流れの問題解決組織、問題解決手法って望めないものなのかな。もしものぞめるならそっちの方が僕には好ましい。最初に芋を洗い始めた猿が誰かや、最初に海に飛び込んだ海イグアナが誰かなんてことは正直言ってどうでもいいことだし、ましてそれが僕(アナタ)の役目かなんてどうでもいい。そこのシーンでのリーダーというのは、誰が決めるものでもなく、偶々問題が発生しているその状況下で、偶々そのときに解決を望めるコンディションを備えた者がパフォーマンスを発揮する。そういう運的要素が多分に決定要因として関与して、作用したらいい。こんなこと言うと「頼りねーな」となっちゃうでしょうけど。
加えてもう一つどうにも釈然としないのは、コンサルティングファーム内部のべき論では”なく”、一般的なビジネスにおいて、会社において、社会において、特定個人がリーダーシップを一生涯発揮しつづけるのか、あるいは特定個人が何度も何度も発揮し続けるのかということ。
個人的には、リーダーシップの発揮なんか極たまにでよくないですか?成果の大きさの度合いによっては生涯にたった一度か、ある一定期間たとえば1、2年間だけでも十分に立派じゃないですか?とか思うんですが、どうでしょう。反対に、ずっとリーダーの人はずっと目標を変え続けてずっと新しいことに挑み続け永劫チームを高みへとリードしてゆく、というのならそれもそれで良いのですが逆に、後進にバンバン道を譲ったら良いとも思うのですがいかがか。土イグアナとか空イグアナとか見てみたいし。

僕個人の経験談としてですが、現実の社会や組織では、決して力を備えていけなさそうな人こそがリーダーシップを発揮しているケースって結構な頻度であります。
というかむしろリーダーシップを発揮して欲しいひとの有様、素行というのは、経験あり、知識あり、指導力あり、開拓力あり、緻密で、繊細で、機微を捉えて、でも地味に確固たる価値基準をもって、でも影響範囲小さく振る舞ってるのが常な気がします。しこれと反対にリーダーシップを発揮したがる(故にそれを「リーダーシップ」と呼ばずとも組織への影響力や牽引力を持ってしまっている)人というのは往々、社交家で、思考が大雑把で、緻密な作業は苦手とし、あくまで派手、見栄っ張り、向こう見ずで、賭け好き、声が大きくて、自分なりの正義を盲信する、あまり反省せず、ちょくちょく論理的不整合を吐き、事の終わり頃に帳尻会わせに奔走する、必して結果責任を言い逃れる、そして喧嘩早い血の気の多い人が多い。
この印象って、、僕の身の周りだけかな。そうだといいけど。といいますか、著者からしたら「だからぁそれはリーダーシップではありません」と叱られるるかもしれないけど、現に身の回りの社会はそういう風にして成り立って、一応回ってる場合が非常に多いってことだけが言いたいことです。なんなんだろうか、この変な感じ。彼等とは何者なんだろうか。彼等の果たしている機能、役割のことを何と呼べばいいだろう。

とかいいつつ、記憶に残った部分で、リーダーシップってどういうことなのかに関するメモ。
・目標があるから、リーダーが必要
・命を預けるときの人選がリーダー人選
・チームの全員にリーダーシップがあっても混乱は起きない
・日本の社会ではリーダーシップは誤った理解
・リーダーは物事を決める。
・リーダーは決定の責めを負う。
そんな感じ、です。


採用基準