岩瀬大輔著 「132億円集めたビジネスプラン」を読みました。Kindle版。
タイトルの雑味がちょっと嫌気に繋がりそうになりましたがエイヤで読んじゃったら、なんのことはない。とてもよい内容。もっと早くに巡り会って、読んでいたかったところです。

No16

「思い」に共感する人々が集まり、考え、実践に移し、行動していく。そこに集まる人々がいて、ビジネスを動かすことができて、初めて「ベンチャーを興した」ということができます。

No434

したがってマーケティング調査では、直接商品を買う顧客だけでなく、どのような購入プロセスを巡り、誰がどのような意思をもってそのプロセスに参加するかを理解することが不可欠です。

No437

ほとんどの場合、人は自分が見聞きしたことに基づいて感覚的に意見を形成しています。
しかし、ビジネス上の判断はこれではいけません。

No624

アンケートなどを活用した「地の目」と、パブリックな情報を活用した「空の目」の両輪を活用することで、市場の不満を極力漏らさずにキャッチすることができ、相手への説得力も増します。

No924

個々人の細かいニーズに応えようとすれば、それはサービスの標準化を妨げ、高コストにつながります。戦略の本質は、「いかに捨てるか」ということにこそあるのです。

No944

保険料の価格を決める最終的な場で、私と社長の出口は、意見が対立しました。私は、「ここまで安くする必要はないのではないか。顧客にとって月数百円の差は、購買に大きく影響を及ぼすような大きな金額ではないが、その差額をマーケティングに使うことができれば大きな意味をもつ」と。しかし出口は「若い世代の保険料を、何としてでも半額にしたい」と言い張り、頑として意見を変えようとはしませんでした。
結果的には、若い世代については思い切った価格設定を取ることで、大きなインパクトをもたせることができました。したがって、この判断は正解だったといえるでしょう。これは、MBAでは教えてくれない「理念ベースドプライシング」といえるのかもしれません。

No1024

たとえば、iPhone や iPad などで知られるアップルの新製品のように、市場や顧客に「知りたい」と思わせ、顧客側から積極的に動いてもらうぐらいの圧倒的なブランディングインパクトを構築することも重要な戦略のひとつです。

No1103

ここでひとつ学んだのは、マスコミといったメディア側が話題にしたくなるのは、「意外性」や「ミスマッチ」、ないし「時代性」ということなのだということです。

No1301

私たちはつい、自分が知っている人や頼れる人を軸に考えてしまいがちです。多くの人が、ビジネスは「人脈」がモノを言う世界だと強く思い込んでいる節もあります。たしかに、人脈は仕事上の大切な役割を担っています。
しかし、アントレプレナーシップの定義から学んだ、その神髄は「経営資源にとらわれず、機会から考える」ということにあります。

No1335

投資課には事業が当初の想定通りにいかず困っている時に、何も言わずに自分のできる範囲で必死に助けてくれる人と、事業が計画通りにいっていないことを批難し、売上増のための施策を提案するよりも、コスト削減ばかりを主張したり、「とにかくやれ」と経営者に精神論のプレッシャーをかけてくる人がいます。

No1361

出口は開業準備当初から、「生命保険をネットで買うことをひとつのファッションにしたい」と語っていました。

No1409

その事業がどれだけ大きく成長する(化ける)可能性があるかという「アップサイド」と共に、どのようなリスクを内包し、どのような場合に失敗するのかという「ダウンサイド」を明確に認識し、示す必要があります。

No1569

モノの購買過程でもそうですが、人は「好き」と思わない限りは、コミットしません。

No1590

リーダーシップや組織のなかでの動き方についても十分な情報収集を行い、ロジカルなフレームワークに基づいて分析し、戦略的にアプローチすべきであると教えられます。

No1677

先生の友人が、亡くなっていく経営者のカウンセラーという仕事をしていたそうですが、亡くなる間際には誰一人として「もっと仕事をしておけばよかった」とは言わないそうです。皆が口を揃えて、「もっと家族と時間を過ごせばよかった」「もっと自分のために時間を使えばよかった」と後悔するそうです。

No1764

そもそも、人に「天職」といったものは存在せず、自分が何をやりたいかを探し求めていく過程そのものがキャリアである。そんな考え方を主張した”Planned Happenestance”(計画された偶然)という新しいキャリア観を唱えたのは、スタンフォード大学のクランボルツ教授ですが、私も自身の歩みを振り返り、この考えに大いに賛同します。

決してベンチャー企業に限らず。保険業に限らず。
様々のタイプの組織、そのマネージャ、経営企画管理、事業企画開発、サービス企画開発にとって読んで意味があると感じます。また(個別の事象についてひとつひとつ深く描いているわけではないのですが)事業化にかかる事柄が広範囲かつ網羅的にあるいは教科書的に描かれているので、業務上の必要に応じて、あるいは全体観の必要に応じて、都度読み返してよい書籍だと思います。その意味で常に手元にあっていつでも読み返すことができる Kindle 版は大正解。


132億円集めたビジネスプラン 熱意とロジックをいかに伝えるか