今更感が壮絶ですが、P.F.ドラッカー著「マネジメント(エッセンシャル版)」を読みました。Kindle版。
よく読まれ、広く話題に上るだけあって、ものすごく判りやすく、それにいいこと書いてます。そこは素直に流石。
判ったつもりになりがち、されがちの「マネジメントとは何ぞ」が理知的に整理されて、克明に記されているといって良いです。これでエッセンシャル版だというのだから、本編の読み応えは相当なものです、おそらく。
259
そのような意味において、たとえ経済人の代わりに、天使を取締役に持ってきたとしても、つまり金銭に対する興味がまったく存在しなかったとしても、利益に対しては重大な関心を払わざるをえない。
275
企業の目的の定義は一つしかない。それは、顧客を創造することである。
297
これに対し真のマーケティングは顧客からスタートする。
391
この事実からしても、「われわれの事業は何か」との問いに答えるには、顧客からスタートしなければならない。すなわち顧客の価値、欲求、期待、現実、状況、行動からスタートしなければならない。
469
マーケティングの目標は一つではない。複数存在する。つまり、①既存の製品についての目標、②既存の製品の廃棄についての目標、③既存の市場における新製品についての目標、④新市場についての目標、⑤流通チャネルについての目標、⑥アフターサービスについての目標、⑦信用供与についての目標である。
557
社会性の目標が必要となるのは、マネジメントが社会に対して責任を負っているためではない。それは、マネジメントがまさに企業に対して責任を負っているためである。
589
戦略計画は予測ではない。未来の主人になろうとすることではない。そのようなことは、ばかげている。未来は予見できない。
607
戦略計画はリスクをなくすためのものではなく、最小にするためのものでもない。そのような試みは、最後には、不合理かつ際限のないリスクと確実な破滅を招くだけである。経済活動とは、現在の資源を未来に、すなわち不確実な期待に賭けることである。経済活動の本質とは、リスクを冒すことである。
695
企業においては、顧客の満足が成果と業績を保証する。
844
仕事と労働(働くこと)とは根本的に違う。
仕事をするのは人であって、仕事は常に人が働くことによって行われることはまちがいない。しかし、仕事の生産性をあげるうえで必要とされるものと、人が生き生きと働くうえで必要とされるものは違う。したがって、仕事の論理と労働の力学の双方に従ってマネジメントしなければならない。
1039
IBMは監督の職務も変えた。今日IBMには、伝統的な意味での監督はいない。監督や職長の代わりに現場アシスタントがいる。その職務は、実際に働く者が仕事を理解し、そのための道具を使えるようにすることである。アシスタントはボスではない。
1440
自らに能力のない仕事を引き受けることも、無責任である。それはむごい行動である。期待を持たせたあげく失望させる。
1500
したがって最大の無責任とは、能力を超えた課題に取り組み、あるいは社会的責任の名のもとに他から権限を奪うことによって、自らに特有の機能を遂行するための能力を損なうことである。
1920
報酬について公式を求めても無駄である。いかなる報酬にしても、報酬システムが持っているさまざまな意味合いの妥協にすぎない。
2042
強みよりも弱みに目を向ける者をマネジャーに任命してはならない。できないことに気づいても、できることに目のいかない者は、やがて組織の精神を低下させる。
2045
真摯さよりも、頭のよさを重視する者をマネジャーに任命してはならない。そのような者は人として未熟であって、しかもその未熟さは通常なおらない。
2090
マネジメントの行う意思決定は、全会一致によってなされるようなものではない。
2184
人の心は、期待していないものを知覚することに対して抵抗し、期待するものを知覚できないことに対しても抵抗する。
3095
不祥事が起こると、取締役会が愚鈍だった、怠慢だった、情報を持たなかったといわれる。だが、同じことが繰り返し起こるならば、問題は個々の取締役会ではなく、取締役会という制度そのものにあると結論せざるをえない。
3176
一人の人間が本当によく知ることのできる人間の数が、最大限一二人から一五人である。
3286
技術系の人は、「うまくいかなくなりそうなものは、いずれうまくいかなくなる」というマーフィの法則を口にする。だが事態が複雑な場合には、さらに第二の法則、ドラッカーの法則と呼ぶべきものが働く。すなわち、「何かがうまくいかなくなると、すべてがうまくいかなくなる。しかも同時に」
3413
分離とは、売却ではなくマーケティングである。分離に際して検討すべき問題は、「いくらで売りたいか」ではない。「誰にとって価値があるか」である。
3486
成長は自動的には起こらない。事業の成功によって、自動的にもたらされるものではない。成長は不連続である。成長のためには、ある段階で自らを変えなければならない。
3936
今日の基本的な資源は情報である。それは他の資源と異なり、希少性の原理には従わない。潤沢性の原理に従う。本は売れば手元からなくなる。情報は売っても残る。むしろ大勢が持つほど価値が上がる。
4031
これらのまちがった前提すべてから得られた大前提が、マネジメントの領域は組織の内部にあるというものだった。この前提があるために、マネジメントと起業家精神の区別などというわけのわからないことが起こった。もちろん、そのような区別にはまったく意味がない。
4040
しかしマネジメントと起業家精神が、対立しないまでも異質なものであると考えているようであっては、倒産の浮き目を見ることは必至である。
4050
マネジメントの役割は成果をあげることにある。これこそ実際に取り組んでみれば明らかなように、もっとも難しく、もっとも重要な仕事である。まさに組織の外部に成果を生み出すために資源を組織化することこそ、マネジメントに特有の機能である。
全てが全てではありませんが目から鱗の指摘が多数ありました。職業上、人の上で指揮をする必要のある全てのひとが、必ず、よく読んで、理解するといいですね。