Mubz snap

あなたは必要な人なんですよ、と歓迎されて社会に迎えられたい。そういう風に願うのは、いままでいた共同体から別の共同体へ席を移すときに感じるいたって普通の感情なのだと思うのだけど、それぞれの共同体の所属可能人数の上限みたいなものが実在しているのだとして、一定のキャパを満たしてしまっている状態で、いやーうちはキャパオーバーだからあなたのこともあなた以外の人のことも要らないんですよ、どうぞお引き取りください、と言う風に遇されるのもまた自然な状態なんだろうとおもう。

対象が物なら、いやもううちには必要な物は全部揃ってます。お引き取りください。そう言われるのは販売員か営業マンということになる。対象が人なら、入学や転校、転職、あるいは就職を希望するその本人や、あるいは人材を世に送り出す学校なんかがやんわりと、ときにキリっとお引き取り願われるということになる。

もちろん就職難とか被介護難とか入園難とか、年金受給難とか、受け入れキャパが満杯の各種についての話。労働力側、消費者側、債権・債務側いずれにせよ。

で、今現在日本では、物も余ってるし、人も余ってる。余程特別でそして役に立つ、さらには即座に役に立つ。そういう特徴を備えていない限りにおいて、物も、サービスも、人も、なにもかもが既存の共同体からお引き取り願われる側にまわらざるをえない。端的にいえば迷惑がられる。
部分に焦点を当てると、売ろうとする方が悪い、という風になりがちなところではある。が、全体としては、売る側も売りつけられる側も悪者ではなくて、構造なりその見立てが間違ってるとしかならない。しいて悪者をいえば、口先では多様性だの、イノベーションだのと格好の良いことをいいながら、我が身となると旧態依然と永続性ありそうで旨味のありそうな大きな共同体にばかり自らを捩じ込もうとする一人一人の浅ましい小心がそれに該当する。結局のところリスク0を目指して行動していれば、過去の成功ばかりが支持されて、新しい物の見方、新しい価値、進歩、転換というものは遠のく一方に決まっている。それに同じ数式によってはじかれるリスク0を目指して行動していれば、当然皆が一様の行く先を目指すに決まっている。そのうえで、自分だけは一歩先んじてると信じ込んでいるんだから始末が悪い。だからまず浅ましい小心がわるい。
その一方で、小心の者は要らぬ、我が共同体には剛胆の知恵者こそが必要なのだ、若い力が必要なのだと嘯く既存共同体の偉い人たちの願いというのもあるにはあるのだけど、そこはそこ、求められる事柄を自らは行わずにいて共同体の新参者に期待してしまっている時点で、こっちの側の小心というのもあってこの心持ちもまた一種の悪者。
経済と連動してるのかどうなのかということまで及びはつかないけれど、給料が安いから消費が滞る。消費が滞るから給料が上がらない。そんなこんなしてるうちに外部環境が変化して、もういっそ日本人なんか(あるいは人間なんか)つかってちゃ価格競争に勝てないよというのが追加要件として発生してしまって、根治には教育改革とかいう現状打破とは関係の無い明明後日くらい距離の遠い話まで割り込んできてしまって、もうもとの今現在の問題の解決に着手する余裕なんかありゃしない状況に突入してた、とかいうのと凄く似た印象がある。

実際問題、社会で起こってることはそういう類いのことなので、新しい共同体を保持しうるほど価値のある事業の創造が、沢山の数誕生しなくちゃいけない。そうして人が幸せを感じながら生きるのにはなによりもまず「あなたやそのほかの誰かの力が必要なんですよ」といつも誰にでも門戸を開いたような、歓迎の雰囲気が社会全体で通常のものとして運転されてる状況なのだと思う。
「うちにもうあんた用の余計な席は無いよ!さ帰ったかえった!」と言われて幸せを感じるということは、人にとって困難なのだから。自分だけのそして永らくの安寧をあまりに強くあまりに真面目に願いすぎると、結論として他者を冷遇する共同体だらけになるのだし、全体として不幸せを背負い込むことになる。個人貯蓄がもの凄くあっても、使い道が無い人のように不幸せ。そんなことなら少し不真面目で、少し大らかで、自ら挑戦的で、やや悪戯好きなくらいが丁度いい具合に全体を幸せに導くはずだと、今に限って、おもえる。

だから共同体の運営について影響力を示せる立場にある人は、何もかもが計画通り微増するように統制された制度を作る・持つ・維持することじゃなくて、あるいは官僚的で管理的な能力じゃなくて、多少のブレ幅を許容できるその方法を用意してそれで悪戯を仕掛けてくれた方がよほど全体にとって意義があるし、どこかの共同体に挨拶に行く機会のある人は礼を尽くしながらも悪戯に対して一枚上手をいく企みで朗らかに居れば良いのじゃないか、もしそうしたら皆が楽しい気持ちになれるのじゃないかと夢想する。


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