加地倫三著「たくらむ技術」を読みました。
著者の加地倫三さんという人を知らなくても、「アメトーーク」「ロンドンハーツ」のプロデューサといえばピンとくるところだとおもいます。

「たくらむ技術」ということで技術のことを期待させる表題ですが、実際には技術のことはほとんど何も書かれていません。ただ、それでもって内容がダメかというとそういうことではありません。

書かれていることを大掴みで言えば、

読後の記憶を手がかりに、本書に書かれていることを大掴みで言えば、

  • 取り組んでいるその事を、好きであれ
  • 他人の仕事を奪う勢いで、前のめりでやれ
  • 他人の真似をするな
  • スタッフに気を配れ
  • 番組を見る人を最上位に
  • 自分なりの拘りをもて
  • 細かいところまで自分でやれ
  • 継続という勝利を得るには、たまにブレたり負けたりする必要がある

そういうことだったかなと振り返ります。
さてこれらが技術か?というと当然そんなわけはありません。そうでないことは冒頭に書いたとおりです。むしろどちらかといえば根性論です。夢へ向かう情熱や、仕事への姿勢、もの作りへの挑み方などということの周辺について彼の持論が書かれているということです。

で、技術論じゃないとだめかというと勿論そういう訳は無くて、なまなか技術箇論よりもこっちの方が参考になる。というか頭を垂れざるをえません。
だって(好き・嫌いや、中身の善し悪しはともかくとして)売れるコンテンツを創り上げたその本人がそういうことなんですから。ここはもう、読んでるこっちとしては平と言うこと聞くしかないじゃないですか…と。そういう意味で非常に有益です。ま、実際そういうのを望んで本書を手にした節は多分にありました。

僕はテレビの世界の事は知らないですか、なんでもかんでもディレクターはじめスタッフ任せにするプロデューサの人は割合としてかなり多いと思います。ま、実際そうしたくなる気持ちも解らなくもありません。個々プロジェクトは忙しいし、客は複数あるし、案件はその何倍かあるし。ね。
けれど、殊更「作品を作ってる」というその一点にとり組みの意義を集約するのなら「徹底的にコントロールして、やりきる」以外には無いというのは自明です。
なんだか、プロデューサーという仕事について前向きな気持ちが得られる一冊でした。


たくらむ技術 (新潮新書)