さて。
世はあいかわらずクールビズがなんのかんの言ってますけど、そんな個々人が勝手にすればいいという結論が見えてしまってるようなものを政府のとり組みと称するようなアホみたいな事態は、脳味噌と頭頂部が勝手放題なっちゃってる人たちに任せとくとして。
いよいよ市井の我らに熱い夏がやってきます。

この時期になると、電車内や街中、オフィスでザサッと扇子を振りかざすシャツ&スラックス姿のメンズを見かけますね。ええどの職場にも、だいたい1〜2名は均等に配分されてるはずの彼らのことです。彼らについてすごく気になってしまうのってのは、僕だけですかね?いやきっとみんな気になってるはずなんですよね。声にならないだけで、きっとそうにちがいない。

職場で見かける彼等なら身元はだいたいハッキリしてますが、身元が明らかでない彼らにせよ、どうみても普通に通勤途上のサラリーマンといった風情なんですよね。まあビジネスバッグに新聞紙なんか捩じ込んでますし。なのに?急に?扇子?ドボチテ?
ぱっと見の風貌でサラリーマンと見せかけておいて、からの、その実は落語家なの?棋士なの?呉服屋の息子なの?ベテラン刑事なの?休日は主に和装で過ごしていますなの?ね、なんなの?
てなるのは僕だけじゃなく、みんな同じようになりますよね。きっとそうにちがいない。

僕はかなりデリカシーに敏感な人間で、他人の秘め事を率先して一生秘めさせ続けたい質ですから、流石に実際に声をかけて聞いてみたことはありませんが、秘めた部分を憶測するに、その背後にあるライフスタイルなのか趣味なのか指向性がなんらか影響してようやく、扇子を常用というとんでもない事態にたどりつくはずなのです。
どんな秘め事、背後関係によって彼はいよいよ扇子を手にするに至ってしまったのか。また、のみならず臆面も無く公衆の面前でカイチンしてくれているのか。ほとほと気になります。

深くふかく日本文化を愛してるの?閉じていれば指し棒としても使えますなの?古来からある収納性と可搬性に秀でた多目的なグッドデザインプロダクツなの?一周回ってトレンドタマゴなの? 類推することは不可能ではありませんが、これが正しそうかというと、皆目判りかねます。むしろしっくりこない。

今一歩類推を深めるために彼らの扇子以外の特徴に目を向けてみますと、概ねウェットタイプの整髪料使ってる気がします。これは何故なのか? むしろ逆にウェットかつ扇子という取り合わせに対して僕が過剰反応してるだけだというのか? だとしたところで、ウェット整髪+ツーポイント眼鏡+扇子。気になりまくります。痩せ形の体系にベルトの締上げ方が大分きつめだと、100点満点気になります。

えぇはい、そうですね。このように扇子を胸ポケットに忍ばせていれば、いつでもどこでも涼を得ることができるんですよぉ、て言うの?言うつもりなの?何なの?暑がりなの?環境に優しいの?お洒落なの?モテるの?てかモテたの?

必要性も、メリットも、なにもみえちゃきません。実像が謎です。がここはひとつ一足飛びに
つねづね思っているところの個人的な結論をここにきっぱりと宣言します。

要するに心が中二ですよね。絶対に中二であるはずです。病状の進行度合いは色々あるとおもいますが、間違いなく中二の頃の気分で今も生きてしまっているのです。違いありません。
この属性の人たちの懐中時計所持率はおそらくかなり高めのはずです。ザサッと扇子を開く華麗な手さばきをそれなりに練習してきた過去があるはずです。それは家で、部屋で、独りで。開いては閉じ、閉じては開きしてます。いまザサッと扇子を開く現実が、もはや状況証拠といって過言ではありません。その練習風景を思うにつけ、いまこの眼前で繰り出されるザサッに腹の立つこと腹の立つこと。はて、どこ向けの華麗さなのか、何を得んが為の鍛錬か、実際この間に何を得たか。ちょっとのぐうの音も残さぬ最果てにたどり着くまでとっちめたい想いが沸々です。

だってですよ。昨今、非扇子の一般人は実用ベースで USB 扇風機とかでキャッキャ言ってますもん。渋谷の該当じゃうちわの広告を配ってますもの。最悪、ビジネスバッグの中のクリアファイルでしのぐことができますもの。
そこの諸事情を押し切って、敢えての扇子所持です。白昼堂々、衆人環視の下での堂々たる現行犯です。胸元からスッ。手首の返しでザサッ。顎上がり気味、目伏せ気味、眼鏡落とし気味でのパタパタパタ。もう、けしからんったらないわけです。度を超した破廉恥です。

ですから、扇子所持及び利用の犯人達とその予備軍達には、今一度その犯行動機を思い返して、周囲の視線の含む意味をよく捉まえ直して、また利用を止めてくれた母の声によく耳を傾けて、深い反省を促したいところです。いや、も、ほんとに。

例外的に所持が許されるのは、マジ・ニーズがある、太った人。これは除外されます。またその他の例外として演出目的の所持が許されているのは、海外からの旅行客、先に記した職業上どうしても必要な人。これらに加えて「めぞん一刻」の一ノ瀬花枝だけとなります。
一ノ瀬さんですらも、太っているというマジ・ニーズとこれにプラスして座を盛り上げるという明確な役割の下での所持です。

中二の恐れがある方々、どうか、今夏は過ちを繰り返さぬよう、重々。


めぞん一刻 9 (ビッグコミックス)