Mubz snap Bruno ventura

金曜日の夜、神田界隈で食事をして停車していた自転車まで戻ったら前輪がパンク。パンクも回を重ねると精神的ダメージを最少までコントロール可能になります。「ああまたですか。仕方ない」てなもんで。金曜夜なんかにパンクすると店は空いてないし、家にパーツも無いし。困るんですけどね。

そんんわけで、翌日の土曜日午前中に最寄りの小径車専門店へパンクした自転車をひっぱってゆくことに。まだ午前中といえども、今夏のこの気温と日差しの下での移動ですからシンドイです。それでも頑張って 10分ほど歩いて小径車店前に差し掛かったところ。目標地点の手前にハーフパンツに黒Tシャツ、浅黒くて、部活のコーチみたいな人物がジッとこっちを観てる。その小脇には、小学生がひとり。

はて?どちらさんでしたかね。となりながらもこれはきっとよくある自分のその後に居る誰かを見てるパターンでしょうよ、とタカをくくってスルーしようとしたら、意外と自分が声をかけられる。「どうしたんですか?」と。

無論、へ?と、なる。え?オレ?と。プライベート服で気がつかなかったけど、よくよく目を凝らせば、うちのエリア担当の宅配便のお兄さん。(と、その息子。)

こちらの事情を伝えると直ちに「自転車屋、閉まってますよ」と。ガーン。暑い中ひっぱってきたのに営業してない。最寄りで知ってる自転車屋はここだけだってのに・・

「あー工具があったらオレが速攻直すんスけどねー」と続ける。で、やっぱりお兄さんは仕事柄エリアに詳しいので、近場のもう一店舗だけある自転車店の場所を教えてくれた。そのことに礼を言って、教えてもらった店を目指す。その時点で既にシャツの汗じみが心に堪える状態だったのだけど、パンクさえ治ればの一心で、頑張って再び自転車を引っ張る。

そうやって汗だくになって紹介してもらった別の自転車店前に辿り着く。も、敢えなく、クローズ表示。もう仕方が無いので、修理は諦めて、一旦家にもどるべく、歩き出す。そうやってトボトボトボトボ。ようやく家から一番近いデカい交差点の前に差し掛かった時。

えっ、これって量子転送なの?と思うさっき見た構図で宅配便のお兄さんと小学生が、また、そこに居た。

聞けば。自転車のことで困ってる人を放っておはけない(+自転車のことが大好き過ぎる)らしい。なので、ここからは少し離れるけど銀座の方の知ってる自転車店まで足を伸ばしてみよう、ということになった。そうと決まればお兄さんの動きは早い。小さめのバンに積めるよう、パンクした前輪を外し、前輪と本体を後部席にのせて、小学生の息子も後部座席にのせて、出発。

特に音楽やラジオを流すでもない後部座席の小学生がデカい声の独り言を言い続けている車中では、長男の部活バレーボールの大会の話や、自転車遍歴の話、先日遭った自転車同士のトラブルの話、その結果現状嫁に工具箱を魔封波されていて辛い話などして過ごす。

そういうおじさん同士の不思議な会話を愉しんでたら、大通りを小道に折れた。どうやら店は付近らしい徐行運転。車をソロソロと進めると、何台も自転車が並ぶ光景が目に飛び込んだ。幸いなことにその知らない小径車店が営業中というシグナル。店前に車をつけて、後部座席から自転車を降ろし、店内へ運ぶ。迎える店員に状況を伝え修理を依頼する。破れたチューブの他に、ぱっと見でわかるほど痛んだタイヤも併せて交換することにした。

その依頼のついでに、先日から考えている前後輪を 406 を 451 に交換した場合の金額を聞いてみた。店員はノギスを持ち出して色々と採寸してサイズアップが可能なことを一旦確認してから、ホイール、タイヤ、チューブ、そしてブレーキのパーツ交換でしめて5万はくだらないということを教えてくれた。それに工賃を加えたらもっとだろうと思ったので、もう、そちらの方は断念することに決めた。それくらいの金額なら乗り換えの準備金に勘定したい。

今回はパンク修理だけでってことで決着して早速作業に当たってもらってる間は、お兄さんは元々持参していた自分のタイヤのスポークのことを店員さんに相談して、その後、お兄さんと息子と僕で店内の最新モデルを眺め回す。

知らない店だけど品揃えは好みで、その点でもついてるなと思う。surly が数台、CINELLIが数台、あとはモールトン、E.B.S、Tyrell、tokyobike とかそれぞれ数台。ピカピカの小径車を眺めていたら、向こうの方からキャッキャ声が聞こえる。

Surly の PUGSLET OPS の前に兄さんと息子。「こら、商品に触っちゃダメなんだぞ!」とか「このタイヤ、スゲーなあ。」「あーパパも触ってるぅーっ」とかそういう。僕も現物を見るのはこれが初めて。こんなの無理と断言できる、ちょっとしたトラクターくらいの化け物サイズのタイヤ。リムテープがどんなになってるのか良く判らないチューブの迫り出し。眺めてるだけで笑えてくる。
そんなこんな、ひとしきり店内の品々を舐め回すように眺め、それを終え、僕の自転車の修理作業が着工済みであることを見届けてから、お兄さんとその息子は車に乗り、去っていった。

ちょっと顔なじみなだけの僕に、わざわざここまでしてもらったのでちゃんとした御礼の意を伝えたかったのだけど「だったら!今度一緒にツーリングに行きましょう!」ということでヒラリ身をかわされてしまった。

今回の幸運は、必ずしも僕が一方的に助けられたということだけじゃなく、お兄さんもお兄さんで、嫁に工具箱を封印されていて寂しいところもあり単に自転車に触れたかったというのが真相なんだと思う。
ほどなく僕の自転車は修理を終えて、昭和通りをパリッとした前輪で気持ちよく帰ることができた。

ただし。過去、スノーボードに誘われても、サーフィンに誘われても、ダウンヒルに誘われても、ゴルフに誘われても乗っからず、一目に触れぬ様こっそりとスケボや小径車に興じてる僕だから、今回のツーリング話もきっと見送るとは思うのだけど、もし御飯ならいつでもいけるな、と思う。


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