先10年着れますから…とかいう定番の売り文句で唐突にライダースジャケット購入を促されまして。身内に。詐欺師の繰り出すフレーズって、ある種の天然なんだなと本日再発見したマブズです。

その買い物帰りの足で立ち寄った八重洲口にあるルノアールのトイレで得ることになったもう一つの発見について。トイレに入り便座の上に視線をやったときふと目に飛び込んだ「sho shu gen」の文字。はい小林製薬のトイレ芳香剤消臭元です。これ切欠で突如天から降ってきた、この先一生涯何の役にも立たない小さな覚醒の話。

ローマ字表記を手がかりにして、単語の発音を学ぶというスタイルは定番も定番。当たり前に行われています。おそらく日本国内だけじゃなく、いたるところで。
ローマ字表記手がかりというのはどういうことなのか。もう一段細かく分解すると、まず「知ってる発音に置き換えて他言語の音を知る」ということに他なりません。至極当然のことですが「耳で聞いた音をまねる」というのとは違います。
聞いた音を真似て音を出してみる取り組みは最終目的地となる一次情報ソースに触れているのに対して、ローマ字表記で発音を知るというのは一次情報ソースが無い状態で音を「知った気になる」ということに他なりません。脳内で音を俗にいう所の「再構築」に取組んでいる訳です。一段階回りくどいやり方ですね。この回りくどい手段は、コスト安ですしシャイな人でも気楽に取組めるメリットがある反面で、その結果精度においてリスクを孕みます。

今日僕はトイレで何やら得体の知れない物体を見かける。
その物体のラベルに、音の手がかりとなりそうなローマ字で sho と shu と gen と書いてある。
母国語の発音に倣うと、ショという。シュという。ゲェンという。
だから僕はこの物体をショ・シュ・ゲエン、と呼ぶ。

もちろん僕らの知ってる製品は「消臭元」。もっとラフにいえばショーシューゲン。強いて言えばショーにアクセントを持ってきつつ、ショーとシューはだいたい同じ強さと高さ。で、ゲンでトーンを下げて強さも絞って単語の尻をすぼめて収まるようにいう(とおもいます)。
だけど、ローマ字だけから発音を手探ると、そういった理解は難しいとおもいます。あくまでも元々知った母国語の音に倣って発音するとどうしてもそちら側の習わしに引っ張られるものですし、それにショとシュとゲェン、その間あいだの繋ぎ方も抑揚も少し変になります。

人によって言語圏によってそれぞれとおもいますが、ショにアクセント置く者もあれば、シュに置くもの、ゲェンにおくもの、色々出てくるはずです。それに加えてショとシュとゲェンの「間」とか「連なり」にかなり自由度が出ます。
例えばですが、ショをかなり地味目に低く目に入って、シュにアクセントを持ってきて高めに伸ばし気味にして、ゲェンでオーソドックスに締めくくる。すると僕らが小学生のときに倣った英語での自己紹介のルール、自分の名前のお尻から2文字目をアクセントにして自己紹介する、アレが大成することと思います。なんだかいかにも欧米人風の発音のアレ。(でも欧米人が名前の後半にアクセントを置くルールを持ってるか?というと全くそんなことはなくて、現にいちばん頭の方にアクセントを置いて「イッチロー!」とか。ありますからね。それはともかく)で、です。出来上がりは、ショッ↓ シューー↑ ゲエン↓! 変ですね。
別で例えたら、Oh my god! でもいい。この音の回し方で、ショ↑ シュ↓ ゲーーーー(ン)→ と言うこともできます。それは「チョッチュネー」にも似た感じがします。関係ないけど。

だから何だ、ってことですが。

欧米なまりな日本語を発音する日本語学習者の人たちは、本か単語帳かをよく読んで、脳内で音を再構築して、おそらくこうだろうなとおもえる発音の日本語を習得したんだろうなぁ…と思えますし、反対にまるで日本人のように流暢な日本語発音を駆使する日本語学習者の人なんかはきっと日本人との直接会話でかもしくは音(の教材)をよく聞いて口ずさんでそうやって日本語を覚えたのだろうなあ…と思います。
そう思うと、母国語とは別に日本語を習得した人の発音の有様でその人の生真面目さとか不器用さとか性格の一端が垣間見えるような趣深さが一つ加わりますね。

ね、役に立たなかったでしょ。
僕ももうこのことは忘れて、買ったライダースジャケットの処遇でも思案することにします。

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