新年一発目から、大分渋いですかね。
「人を生かす 稲盛和夫の経営塾」を読了です。面白かった。
以下、個人的に印象深かった箇所を、抜粋で。
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ですから、いっしょになって経営方針をつくるのです。「さあ、これをみんなでやろう。オレも手伝うから、君、この部門の長としてがんばってくれ。困ったらいってくれ。」と、社長がいっしょに御輿を担ぐのです。確かに事業部制にして、それぞれに責任を持たせることは、トップとしてはたいへん楽ですが、会社の規模も小さいわけですから、やはり社長自身が末端にまで目をかけなければならないと思います。経営者であるあなたが、現場で働く社員に本当の愛情を持って接することです。そうすれば、みんながついてきてくれるはずです。
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なぜそういうことをするのでしょうか。以前にも話したことがありますが、二七歳で私が会社をつくったときには、「稲森和夫の技術を世に問う」ということが目的でした。ところが、新しい社員が入ってきて、その社員たちが「私たちの将来の生活はどうなるのですか」と私に詰め寄ってきました。「この会社は私の技術を世に問うために作った会社だと思っていたのに、見ず知らずの社員を雇ったばっかりに、その社員の生活を私が守らなければならなくなった。そんなバカな。そんなことなら、事業を始めるのではなかった」とまで思いました。
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誰にも負けない努力をするのは、われわれ経営者に要求される課題であって、社員には労働基準法というものがありますから、それに準じたものにしなければいけません。「社長があれだけがんばっているのだから、一、二時間くらい残業をして手伝ってあげよう」という気持ちが社員から自然に出てくるように、つまり、社員から自発的に「してあげよう」というような雰囲気をつくっていくことが、ベクトルをそろえるということだと思います。
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「技術なんかいらない、とにかく売り歩け」というやり方で営業ができるのではないかとお考えのようですが、とんでもないことです。一生懸命に売りに行くのなら、公共土木事業の設計会社として、同業者よりもウチにはこういう特長、こういう技術がありますということを営業の社員に教え、「それを武器にして売り込みなさい」といわなければなりません。または、当社は他社にはできないこういうサービスができますというツール、武器を持たせなければ、営業なんてできるわけがないのです。
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会社が小さいうちは、経営者がすべてを見ることができますが、会社が成長し、大きくなるにつれ、全体を一人で見ることは難しくなってきます。そうなると、経営者にとって、自分の考え方を理解し、自分の分身のように経営責任を担ってくれる経営幹部の存在が不可欠となります。
どの会社でも、優れた人材が、はじめから多くいるわけではありません。会社を伸ばしていこうとするなら、経営幹部を育成していくしかないのです。
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ところが、あなたは突然変わり始めた。「ただ回転寿司の店をやっているのではなく、売上一〇〇億円規模の外食産業を目指して、自分の人生を歩いてみよう」とお考えになり、そのことを社員に話し、その目標に向けて仕事をし始めた。そうすると、創業時からいる部下が頼りなく見える。そこで、「俺もこうしているのだから、お前もこうせんか」と一生懸命説いておられるというのが現状です。
残念ですが、その方にあなたと同じように変われと要求することは、無理なことです。似たもの夫婦のことを「破れ鍋に綴じ蓋」といいますが、スナックをやっておられたあなたには、それに合うような社員が来ていたわけです。つまり破れ鍋に合うような綴じ蓋がかぶさっていたのです。
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あなたのところはクリーニング屋として多店舗展開されて、非常に大きな規模になっておられますが、有限会社です。みんなに「がんばってくれ」という場合、社長のところの儲けを増やすために、家庭を犠牲にしてでも働け、ということはいえません。それは当然のことです。実際、あなたも「家庭を犠牲にしてでも働いてくれ」と社員にいえないといわれましたが、その通りなのです。ですから、考え方がおかしいのです。
私がつくった京セラという会社は全従業員の物心両面の幸福を追求することを目的としています。「稲森和夫という男が社長をやっているが、稲森和夫の財産を増やすためにつくった会社ではありません」とつねづねいってきました。
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京セラでも、昔はそうしたパートの方々がどんどん提案してくれました。大卒で入社三年目ぐらい経って責任者をしている人間に、その下にいるパートの方が「ここをこうしましょう、ああしましょう」と、提案してくれるのです。普通であればいわれたことをただやればいいというパートの方が、どんどん提案してくれました。わずか一〇人しかいない職場の中で、次から次へと提案を出して改善していくという。それが実は組織の強さなのです。
つまり、現場の社員に、どうすれば利益が出るのかがわかるような仕組みをつくることが必要なのです。あなたの会社はそういう組織づくりがうまくいっていないのだと思います。
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「そうだ。確かにあなたがいう通り、私は彼に冷たくした。だが、問題はなぜ冷たくしたかということだ。今までずっと赤字を続けてきた彼の会社が黒字を出したとあなたはいったが、あのときの黒字は豆粒ほどの黒字だ。それまでの累積赤字たるや相当な額になっている。少しの黒字を出したぐらいで、それをほめられるのか。
もし、それを私がほめたら、彼は喜ぶかもしれない。しかし、彼自身がそれで満足してしまったらどうなるだろう。『社員を幸せにしてあげたい』と私はいっているのだ。そんなわずかな利益で社員を幸せにしていけるだろうか。毎年、賃金を上げなければならないのに、そんな程度の黒字では、社員を守っていけないだろう。だからこそ、私は彼に『そんなもの利益のうちに入るか』といったんだ。それを聞いた彼は大変落ち込んだかもしれない。また私を恨んだかもしれない。しかし、私はあえて恨まれてもいいと思って、そういったのだ。」
って、ね。
全ての経営者がこうだとは望めませんけど、極真っ当な経営者の方々はだいたいがこういう苦しみとか悩みと共存しながら日々を生きてますよね。大変なことではあるけども、法人の人格を決定づけるのはとどのつまりは代表の意思一個だったりしますから、人格を磨き続け、発揮し続けて会社と共に生きるよりほかに選択肢はないということかもしれませんね。
そういう視点で眺めると、あの社長のあの辺に豪奢な趣味は、ある種人格者を演じることによって生じる自我崩壊の危機に対するせめてもの対処策だったんだなとか振り返ります。人間なんて弱いですから、どこかで補わなくちゃやってらんないですものね。
そういう意味では、ゴルフが好き、ギャンブルが好き、スポーツカーが好きなんてのは、案外とだいぶ収まりの良い我の発散なのかもしれませんですはい。