なぜか土曜日。当初の予定日をうっかり忘れてしまったため土曜日の健康診断。
健康診断は事前の準備として採便・尿があるし、それに前日の食事制限もある。これら全てをうっかり忘れた。というわけで土曜日に予約日変更し、早朝の春日へゴー。ここで天才技師と出会うことになろうとは、この時点では予想だにしない。
大勢の人がそうであるようにバリウムが苦手だ。社会人生活を始めて幾度となく健康診断を受けてきたけど、紙コップ一杯の重金属飲料「バリウム」を全量飲み下せたことはただの一度もない。苦手、というよりももう、無理の域。いい大人なのに「できません」だ。情けない。
ところが今回の検査で、ドトールでいえばLアイスの量あるバリウムを全て胃に収めることになった。しかも概ね「苦もなく」といってよいスムースさで。
当日のコンディションが特別によかったわけじゃない。ポカリのコマーシャルみたいにカラカラの喉!とかそういうのは全然ない。こころの汗かきまくったわけでもない。またバリウムが進化したわけでもない。例年通りの白く、重く、イチゴフレーバーの金属製液体。
検査技師が素晴らしかった。この上なく素晴らしかった。そこいらの百貨店店員じゃ
およびもつかないホスト力で検査室へ迎え入れ。入室するなり検査の段取りについて説明しつつ、去年は検査受けた?受けてない?などパーソナルな会話スタート。リラックスが大切ということで、そんなのは頭ではわかってるけど言われたってどうしようもないようなことを、身を持って実現してくれようとしてる。
で、会話を通じて、リラックスが大切。あとこわばってお腹に力を入れないことが大切、さらには、笑うことが大切。という具合で、具体的にどうリラックスを実行するかをナビゲートしつつ、トークスキルで実際に笑わせてくれる。
で、教わったTips というのが、結構そうかなるほどね、な内容。 まずバリウムが苦しいのはバリウムそのものの飲みにくさによるものではなくその手前に飲む発泡剤によってせり上がってくるものの影響がおおきい。せりあがってくるものを止めるためには息を止める、ではなく空気を飲み込むほうがより楽であること。また実際に検査をする際に最初飲みながらの撮影、そして全量飲んだ後のグルグル撮影があることをインストラクション。それから、多くの人がそうしてしまうのだけどやっちゃいけないのが、バリウムを味わってしまう、ということ。匂いこそストロベーとかバナナとかついてはいるが、結局は不味い。味わってはいけない。そんなことを言い含めてくれながら、紙コップを手渡し、「重いからね」とコップの下に小指を添えることを忘れずに付け加えつつ、どこまでも徹底して軽妙なムードで、撮影室へ消えた。
そこからは実際に指示通りにバリウムを飲み下しながら胸部の撮影、全てを飲み干してのグルグルだったのだけど、もともとげっぷについてはほとんど苦でないこともあり万事が万事信じられないくらい順調に終わった。あれだけ苦痛だったバリウムの飲み下しが、一回の息継ぎもなく全量をスルスルと順調に進んだ。順調さたるや飲みながら自分自身で「え、こんなに喉に苦しさなく入ってくものなのか!?」と驚くほど。
そして最後、機械のアームで胃を押さえつけての撮影の段階。(おそらくここはただ胃を圧迫して撮影する目的のためだけにある苦行でしかないはずなんだけども)技師はアームを操作しながらスピーカー越しに説明してくる。マブさんいいですかーまず部位の説明をしますねー。はいまずここがあなたの胃の入り口です(グイ)、で今度が胃のど真ん中ですねー(グイ)、それから胃の出口に当たる場所ー(グイ)、でここがみぞおちと言われる部分ですねー(グイ)。はいお疲れ様でしたー終わりですー。と。説明する風を装ってちゃんと本番撮影をすませてくれていた。
こんなにできる人がいるのかーと、心から関心。この技師はここに至るまで、いったい何名の大の大人の駄々・不満・愚図に耐えたことだろうかと思うと同時に、それらをきちんと解決する方法を編み出して自分でその解決を実行していて、なんだかとても素晴らしいものを見せてもらった気がした。
人へ、社会へ文句ばっか言って被害者ズラして立ち止まってるんじゃ、ダメなんだねってほんとそう思うよ。うっかり土曜日になって得した。